私は推理する

 疑い深い私は、小雨がぱらついていたが、堺浜のイベント広場まで走った。
 前日の警備員の話が、どうしても辻褄が合っていないと思ったからだ。私の会社は、警備業のライセンスも持っているし、私自身の警備員指導教育責任者資格の合格証も事務所の額に入っている。
 なぜそのように疑問に生じたかと言うと、警備員詰め所で、留守番の警備員に、私の携帯から犬の写真は見せていた。
その時点で、警備員は先に保護されていた首輪のワンコを知っていたはずだ。知るも何も、詰所の裏に繋いでいたから。
私は「ワンコは二匹で、一匹は首輪をしている」と写真を見せて説明した。警備員は嫌そうに「その場所は管轄外」と言った。
しかし私が粘ったので、巡回中の警備員を呼び戻し、私に同行させた。そしてくだんの、残り一匹を保護し詰所に持ち帰った。


 私が推理したのは、首輪の犬が、なぜ広場まで戻ったのか?
犬が見付かった場所と、広場までは二キロ強ある。信号の無い高速道路みたいな場所を、一匹で戻ることは不可能だ。まずフェンスをくぐって道路に出ることが出来ない。
 それに首輪の犬が保護されたのは、私が二匹を見届け現場を離れたのが、午後二時半。公園のゲートが閉められるのが五時。この二時間半の間に、首輪の犬は公園に戻っていた。

 そこで誰かが、首輪の犬だけ運んだことになる。誰か?
① 犬好きの人が、たまたまフェンス内の二匹を見つけ、首輪の犬だけ見て、車に乗せ公園で放した。ワンコはいつも二匹でウロツイていた。なぜ首輪だけ?
② 犬を捨てた飼い主が戻ってきて、首輪の方だけ車で運んだ。なぜ首輪だけ?  飼い主なら、二匹とも忍びないはず。一匹だけ助けることはない。少なくとも本当の犬好きなら
③ 公園にはドッグランもあるので、犬を連れてくる人は多い。その人が、ここなら誰か面倒を見てくれるかもしれないと思い運んだ。
しかしなぜ首輪だけ? 弱っていて痩せた犬は見捨てられたのか?

警備員の話では、ドッグランがある公園なので、犬を置いていく人がたまにあるらしい。それは想像できる。しかし警備員は五時過ぎまでで、夜間は無人になる。

手前はトイレ。奥のログハウスが警備員詰め所。
弱った犬を襲うのはカラスだけではなく、トビ以外に肉食の野鳥もいるらしい。
とにかく二匹は前日の内に、役所に引き取られた。これから後は、運が左右するだろう。
私もこれ以上突っ込むと、情が移る。犬を飼わないと決めたのは、だいぶ前。主人が飼い犬を残し、先に亡くなるのは、考えても嫌だ。
やはり愛して飼った犬は、最期を看取ってやりたい。


映画が、三度の飯より好きな、アくしょん大魔王
のコレクション棚から紹介する、今日の一本。


「ガントレット」


「Oricon」データベースより
ラスベガスから検事側の証人を護送中、事件に巻き込まれてしまった中年刑事の姿を描いた、クリント・イーストウッド監督・主演で贈るハードアクション大作。


人間でも生き残るには、こんな恐怖を味わう。
ワンコよ強く生きろ