携帯嫌い

 自宅を出て、100m走ったところで、背負ったリュックの携帯が鳴った
慌てた私は、バイクをふら付かせ、落車しそうになった。格好悪かったので、ふら付くまま体勢を立て直そうとしたが叶わず、よろめきながら、車体を傾け左足をついた。

 その拍子にふくらはぎを、車体の一部が強打。

テニススクールへ向かう途中だったので、半パンツ。もろに青たんになる。

 帰宅途中、脚の調子を見るため、大和川の坂を登ってみた。

大したことはなさそうで、一安心。
 
 私はもともと携帯電話が嫌いだ。以前にも書いたが、私は建築関係の自営業だったし、かなり危険な職種だったので、自動車電話が発売されると、すぐに導入した。
 しかし当時は通話料が高く、秒単位で100円玉が飛んでいく感じだった。そのせいで、現場の事故か、得意先の連絡か、仕事の段取り以外にめったに使用しなかった。
事務所を守る家人にも、緊急時と悪い時の情報だけを電話するように、きつく注意していた。そのトラウマが残っていて携帯電話のベルには、今でもドキッとする。それが昨日、たまたま出たのかもしれない。いや、スキルが出来ていないと言われれば、その通りかもしれないが…。


 こんなことを書いていると、昔を思い出す
還暦数年前から、私は第二の人生を考えていた。接待も含め、ゴルフはやり尽した感があったし、夜のクラブ活動もつまらなく感じ始めていた。テニスコートが近くにあったので、スクールには通っていたが、単に体力の衰えを遅らせるためで、自分が求めるものとは少しズレていた。
 アクション映画好きだったので、合間にその手の小説もよく読んだ。ジャンルは、警察もの、マフィアもの、戦争もの、ハードボイルド系のミステリーなどなど。新聞や週刊誌の小説レビューをチェックし、面白そうなのは即買いした。
 そのうち、単行本でも表紙の絵や、表題だけで選ぶようになり、書店へ行けば、五、六冊抱えて帰ったものだ。それが毎週続くと、書店の店主も「好きですねー」と感心していた。
そして漫画を読むような感じで、多読していると、「この程度なら、俺にも書けるのでは」と思い出した。そのころ主婦が小説を書き、ベストセラーになった本もあったので、そのブームに刺激を受けたのも確かだ。
しかし作文を書いたのも、小学生の頃の思い出しかない。
ある日の新聞広告に目が行った。カルチャースクールの「文章教室」。これや、と直感し中之島の新聞社まで行き、講座を申し込んだ。
 私の妄想癖が始まったのは、今更ではない。家人からも「バクを食う人間や」とよく言われたものだ。
「小説家になる。それもハードボイルドの、エンターテイメント」
ベストセラーを生み出し、映画化してさらに儲ける。趣味と実益を兼ね、第二の人生としては申し分ない。
 私の目標はすでに決まっていた


 さて講座を申し込んだが、いきなり小説など書かせてくれない。
最初は、「入門コース」から始まる。小学校で習った、句読点、起承転結、原稿用紙の埋め方など、詳しいことは今では思い出せないが、そんなところだった。講座は一年間続き、講師が適切だと感じた生徒が、「実践コース」に進めた。
 例えば入門コースでは、授業の初めに突然講師が「今朝この教室に来るとき、交通機関を使ったと思いますが、その時印象に残った一人を書いてみましょう」と、課題を出す。原稿用紙三枚以内で、一時間。
ほとんどが主婦の、30名ほどの生徒たちが、考えながら書き出す。この課題に解答はないが、私は人着、つまり人相、着衣を思い出し、肩パットを入れた女性のバックグランドを、想像しながら書いた。
 そんな突然の課題をこなしながら、一年を過ごし、実践コースに進んだ。
                    つづく


アクション映画が、三度の飯より好きな、アくしょん大魔王
のコレクション棚から紹介する、今日の一本。


「マックQ」


(「キネマ旬報社」データベースより)
ジョン・ウェイン主演のクライムアクション。マックQ刑事の親友であり同僚のボイル刑事が銃殺される。マックQは、裏で麻薬組織の帝王・サンチャゴが絡んでいると睨むが…

西部劇のヒーロー、ジョン・ウェインが演じる刑事ものです。
馬に代えて乗る車が、1970ポンティアック・ファィアバード・トランザム黒。
私はこの車の白に乗せてもらったことがありますが、エンジン音はグーです。ボンネットに絵が描かれていたなー。クラブで会った年配オーナーの不動産屋のオッチャン、とっくに亡くなっていると思います。昔の話です。