思い出します…あの日を

  あの日を思い出さないことは無い。
愛犬のボルゾイ二頭を散歩から連れて帰り、事務所に入ろうとした時、激震が襲った。犬も悲鳴を上げた。西の空が一瞬明るくなり、地鳴りが続く。
 頭の中では地震と理解して、犬を屋内に入れたらダメと叫ぶ。
建物内には、家人や子供たち。
向かいの家の二階の窓が開き、見慣れた顔がのぞく。
 私は電柱の揺れや、続いて起こる余震に身構えた。余震はその後ずっと続く。
 その日は、大阪府警の講習会の初日。なんとしても出席しなければならない。朝食後、地下鉄の駅へ行くが、揺れで電車は通常う通り動かないと場内放送。
 その間も駅構内は余震で気色悪いほど揺れる。
いったん帰宅し、車で会場へ向かおうとするがトンデモない。
車は寸刻みでしか動かない。私は諦め、事務所へ戻った。
 
 それからの一年間は、交通状態との戦いだった。
建物の全壊半壊状態の、復旧、新築の見積もり、被害に遭われた業者仲間の慰問。役所との折衝。などなど。
 国道沿いは、公共工事車両などの許可車のみ。私は裏道を探し神戸へ向かうが、考えることは皆同じ。粉塵が舞い、歩く人はリュック姿。風呂も入っていないので、薄汚れた顔つき。
阪急西宮駅は、雑踏、のように行き交う人で、いつもと違う臭い。   
 それから先は、被害に遭われた人は、みな同じような環境で生き延びたはず。
 今日の夕食は、とりあえずフーディーズのホットドッグと、コンソメスープにビール。ありがたや、ありがたや…

地球は一方に被害があれば、一方に幸せがある。
今日のビーチは平穏そのもの。
左のロシアのオッチャンは、毎日グループで訪れている。
ロシアの人は水泳が、結構達者だ。寒い国だが、それなりの練習をしているのだろう。

私も風邪が治って来たので、久しぶりにボードで沖に出た。

潮の香、感触、子供たちの嬌声。ビーチに今いる幸せを感じないわけにはいかない。