登って下りる

 テニスレッスンが終わり、ランチを済ませたのは午後1時を回っていた。一服して、大和川堤防へ漕ぎ出す。
前日に引き続き、DDH(土手ダウンヒル)の練習。しかし坂を下るには、登らなければならない。汗が吹きだし、ヒルクライムに楽しさは見つけられない。上空でカラスが鳴いていた。いや、笑っていたのか…

マーカーコーンを数個持参し、土手に並べてみる。
スラロームをしたいのだが、バイクにしがみ付いていては、ライン取りもままならない。昨日はこの程度の練習で終わった。

以前会ったシクロのライダーは、バイク歴30年と言っていた。子供のころから乗っていなくては無理ですよと、私に聞こえるように呟いていた。確かに手足のようにバイクを操るスキルは、小学校に上がる前に身に付いてしまう。
私の時代は、バイクを持っている友達はいなかった。乗り始めたのがいつ頃か覚えていないが、成長するにつれ、興味は別の事へ移っていった。
そんなことを思いだしながら、コーンを集めた。

私がなりたかったのは、こんな男だ。
「旅人ゴルファー 川村昌弘」