消えた人影
雨雲が近付いていた所為もあり、大和川堤防に人影はない。皆さん職場や、買い物へ廻ったようだ。
子供たちも、そろそろ始まる学校に、浮足立っているのかもしれない。前日のテニスで、少々疲れ気味の私は、一時間のウォーキングで帰宅する。
卒業して東京から大阪へ就職、今では有名な建設会社だが、私の飲食費と会社の給料がエンゲル係数に合っていなかった。
三年で退職、自営業の駆け出しで、むしゃくしゃして映画館へ。
半世紀前の話。その時観た映画をNHKBS で放映していた。
昨夜、録画を再生する。
「緋牡丹博徒」 一瞬にして50年前に戻った。
館内は、周囲の作業服から匂ってくる汗の匂いと、酒臭い息、煙草の煙、掛け声を出す輩、突然流れ出す藤 純子が唄う主題歌。
緋牡丹のお竜が、冒頭で仁義を切る。この瞬間私の涙腺も切れた。
当時22歳の凛とした姿と言葉が、胸に突き刺さる。
今の日本の若い女優さん、この所作と言葉を学んで欲しい。
肩には緋牡丹の彫り物
相手役には、天下の健さん。
そして最後は襲名挨拶で終わるのだが、つたない唄でも、全てが許される女性は少ないもの。それが藤 純子…
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