コーストガード


バイクで走る堺浜コースと並行する水路は、一級小型船舶操縦士のライセンスを取るのに、しばしば練習した所だ。高速で操船し、人が溺れている地点に、浮き輪を投げ込む人命救助訓練。走っている船は舳先が上がり、ポイントに近づくと対象が見えなくなるので、浮き輪を投げる助手との連係プレーを何度もやり直す。

テストの日、揺れる船上では試験官の指示で、各種ロープの結び方、他船への横づけなど緊張の連続。筆記試験は法規や潮位の計算。
何とか試験はパスし、後日インストラクター同乗で、大阪湾を何度か周遊する。
湾で操船するときの注意点を、繰り返し頭に叩き込まれる。荒天の後は、海上に浮遊するブルーシートや、流木に注意、曇天で霧が発生すれば、空と海が同じ色になりホワイトアウト状態に。衝突の危険に備え、見張りと警笛の徹底‥など。
淡路島の岸近くは養殖の筏が並び、そこへ突っ込み破損したら、高額の賠償請求があるとか、沖に出ると船の「当たり屋」が狙っているとか…。
失敗もあった。
息子と二人だけで大阪湾出入り口の小さい島に行って帰港するとき、マリーナへ入る水路を間違え、大和川下流に迷い込んだ。護岸では貨物船が荷揚げしていたが、すぐに気づきUターンを掛けるが舵が動かない。魚探で海底を覗くと、浅瀬になっていた。川の両岸は貨物船のため、掘削されて深くなっているが、干潮で中央付近は一メートルもなかった。仕方なく満ち潮を待って脱出。


ライセンスにトライした動機は、その頃大人気の、米国テレビドラマ「マイアミバイス」の影響が大きい。ボートに住みマリーナで暮らす。やってみたい!
こんな時期、ボートショウで英国バーチウッド製の三階建てボートを見学し、日本では造りえない、プレジャーボートの質感の高さに圧倒される。
欧米の海のレジャーが日本でも流行り、ビジネスチャンスが来るのではないかと、不純な思惑で臨んだのだが、バブルの弾ける音と共に、船への興味も自然と消滅していった。
堺浜コースを走りながら、この水路を眺めるとその頃を時々思い出す。


アくしょん大魔王
「ガルシアの首」は、男の生きざまを鮮烈に描いた問題作。監督のサム・ペキンパーは、毀誉褒貶の人だった。しかしバイオレンスアクションの分野での功績を、誰も否定できない。散りゆく男の潔さを描き、見る者の心を掴んで離さない。ペキンパー組の常連で、主演のウォーレン・オーツも漢を演じたが、ロバート・ウェバーとギク・ヤングのゲイ殺し屋コンビ(?)がアクセントを付け、バイオレンスに奥行きを与えている。