川辺のアクシデント

二日続きの好天。大和川左岸から歩き出す。

左岸から下高野橋を渡りながら、東を望む。近鉄鉄橋越しに生駒連峰。冠雪無し。

右岸に移動する。この時私の眼には、数百メートル先に、キックボードに乗る二人の子供と大人の影。
近付く前に、身の丈ほどの茅の隙間から、その一行が川へ下りて行くのが見えた。
数分も掛からず、その場所まで歩きつくと、川辺の土手から幼児の泣き声、同時に茅の隙間からキックボードを抱えた園児ほどの女の子が現れた。
次に小学低学年の女の子、姉妹だ。同じようにキックボードを引きづっている。
最後に大人。シニアに近いが、子供が孫なら、50 半ばに違いない。
私は通り過ぎながらチラ見をする。後ろからシニアの女性の声が聞こえた。
「ごめんね、ばあちゃんが悪かった」
ボードをキックしながら、園児が私を追い抜く。泣いていたのはこの子だろう。
急いでいるのか、ばあちゃんも手に何かを持って私を追い抜く。後ろから姉がキックボードを蹴りながら続いている。
「…ばあちゃん足が悪いから、急な所で止まると、コケると思って…」
結局、コケないために川にハマったようだ。
手に持っているのは、濡れたボトムらしい。姉が「クツも濡れた?」
「ジュクジュクよ」とおばあちゃん。家が近くなのか、堤防の階段を急いで登りはじめている。おばあちゃんミスったようだが、川にハマる前に、そこへ進入したのがまずい。
姉の声が再び聞こえた。
「お母ちゃんに電話してよ!」
一瞬間をおいて、おばあちゃんは、
「お母ちゃん仕事をしているから、すんだら説明するね」
年の瀬で母親は、介護施設か商店で働いているのかもしれない。
娘は忙しいので実家の母親に、子守を頼んたのか…
私は、なんで危ない川へ子供を連れて行ったの? と聴こうとしたが、おばあちゃんと娘の会話で、必ず出てくる話なので、訊かずに済ませた。

アビコ大橋の上から、川べりを見た。おばあちゃんは孫たちに、穏やかな川面を見せたかったのかもしれない。私は娘が母親を責めないことを願った。

橋を渡りながら、私は落語の「芝濱」を思い出した。なんの関係もないけど…

この作品を初見の人は、予備知識なしで観ると、友情にグッときます。
セント・オブ・ウーマン/夢の香り