体感スパイダーマン

 午前三時前から起床、ユナイテッドが飛ぶか確認して、グアム国際空港へ。五時にはチェックイン、キオスクで昨夜作っていたサンドに、熱いコーヒーで朝食。
 定刻の七時過ぎ、関空へ向け飛び立つ。連休の合間か、台風への恐怖か、乗客は半分以下。
私は19号の卵の中で泳いでいた。そして育ち過ぎたこの台風は、間もなく日本を襲おうとしている。
最初の一時間ぐらいは、揺れもなく快適。しかし徐々に機体は揺れ始める。小さいディスプレーにはスパイダーマンの最新作、「ファー・フロム・ホーム」
しかも乗客が少ないので、私の目には180度の範囲で、10個以上の同じ映像が眼に入る。私だけは空路マップを映し、進行方向を確認していた。
突然機体が大きく揺れ始めた。映画はアクションシーンに代わり、機体の揺れと同期している。まるで機長はスパイダーマンの動きに合わせ、機体を揺すっているようだ。
こんな体験は、USJでターミネーターの体感映画を観て以来。一番強かったのは、台風を追い越している間。
ついに19号を追い越し、紀伊半島が間近になる。普段でも気流が悪いが、今日は特別。機長は機体を大きく西へ迂回させ、四国方面から関空へ突入を図る。しかし高度は一万フィートからどんどん下がり、燃料も少なくなったのか、軽くなった機体は風に弄ばれるように揺れる。
大阪湾に入った。ここまで来たら、落ちても何とか泳げる事は出来る。安心している内にランディング。
乗客はホッとしたのか無言で機体から出始めた。操縦席の扉が開いた。私は「キャップテン、サー、グッドジョブ!」と呟き機外へ出た。

駐機している機体も動く気配がない。

入国審査は、顔認証で済むはずだが、今回も機械は私を通してくれなかった、どころか家人も機械が認識せず、二人とも別室の係官の前でパスポートチェック。当然私は文句の一つも言った。
「この機械は日焼けしたら、通過できないぞ!」
係官は「スンマセン」の一言。機械の導入に関して、どうも業者と癒着があったのでは、と疑いたくもなる。
関空からグアムへ向かう時は、認証機械を通らなくても、出国審査官と面通しでスタンプを押してもらえるが、帰国はここでストレスが溜まる。空港施設利用料を取っているのだから、この辺はスマートにして欲しいものだ。