そして誰もいなくなった

 表題はアガサ・クリスティーの小説題名だが、近頃の大和川堤防は、人影を見つけるのが稀である。
もっとも、予報で30度以上と、熱中症の懸念を伝えられると、午後に外へ出るのは躊躇われるのか…

クリスティの小説では、「絶海の孤島」を舞台に、登場人物が全員死亡する。その状況は、童謡「10人のインディアン」を連想させる死に方であった。
販売書籍の歴代一位は「聖書」らしいが、この小説は六位と書かれていたから、相当な人が読んだはず。
将来、ベストセラー作家が、コロナウイルスを題材に、この表題と同じ小説を書くかもしれない。
そんな事を考えながらバイクを漕いでいると、土手に男子中学生らしいのが二人現れ「オッ、バイク一台だけや !」
今まで、野球やサッカーボールで遊んでいた子たちが、みられない光景を不思議に思ったのかもしれない。
「すんまへんな~、一台だけで」
そう呟き、私はその場を去った。